第4章:激突

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「それには及びません。わが艦隊の周辺には多数の特設監視艇が展開しています。これが敵編隊を発見次第、直掩機を飛ばせば我が方の被害は最小限に抑えられ、かつ、敵の航空兵力を大きく削ぎ落とすことができるでしょう。私はこの作戦に絶対の自信を持っております。全ての責任は私が取ります。私の命を懸けてでもこの作戦を成功させてみせましう」 沢村は初めて宇垣に鋭い眼差しを向けた。 その眼光から彼の自信のほどがうかがい知れる。 宇垣は堂々としすぎたその態度に次の句が思い浮かばず口を噤んだ。 「・・・・・・まぁ、そう熱くならんでもよかろうて」 二人の舌戦の仲裁に入っのはいままで二人の意見を聞きながら長考していた山本だった。 仲裁と言うよりは、舌戦の勝敗を告げる審判の一声の様でもあった。 それを肌で感じ取った宇垣はばつが悪そうに奥歯をかみしめる。 「二人の意見は十分に聞かせてもらった。じゃが、艦隊は個ではなく群であるからして、君たちの見解だけで作戦を左右することは出来ん」 そう言うと、山本は、沢村と共にこの作戦の大要を作り上げた二人の作戦参謀の方向に視線を逸らした。 「儂は賛成しかねる」 先に口を開いたのは、禿げた頭をして年からすると老け顔の大佐であった。 彼こそが連合艦隊作戦甲参謀である『黒島 亀人』大佐であった。 「しかし、これ以降も敵機動艦隊を捕捉できないとなれば、クェゼリン本島があらぬ奇襲を受けてしまうことは必至。本島には敵航空打撃群を撃破するだけの戦力が整っていないことからして、事前に敵艦隊の注意を我らに向ける事は致し方がない、と考えますがな」 黒島はやや横柄気味に言い放つ。
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