月華の咲く下で

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  不思議な出逢いだった その'モノ'はそこにいた 真夏の夜中 祭りムードだった空気も いつも通りの静けさを 取り戻していたそんな日 私はその'モノ'を見た 雲が切れ 綺麗な月が顔を出し まるで鏡に映すかのように 川に輝く月光が歓んでいた時 その川にかかる橋の欄干の上に その'モノ'はいた その瞬間- 空気が 音が 世界が 止まった 紺の甚兵衛に片手に缶ビール 無造作で柔らかそうな茶髪 しなやかな体躯に 遠目にもわかる整った顔立ち 普段は人を見ると逃げる 野良猫達の中に交ざって その目の中には 何も映ってはいないようで そう まさに猫のようで いや 野良猫のようで 一瞬にして虜になった あの雰囲気に あのオーラに だけど'彼'とは呼べない 'モノ'としか呼べない なぜなら 消えてしまったから 一瞬目を離したら もう消えていた 私は目の前で その'モノ'の後ろは川 けれど何の音も 何かが動いた気配もしなかった あの'モノ'は'人'なんだろう きっとそうだろう だけど‥ 不思議な体験をした これが ―真夏の夜の夢―     だったのだろうか‥  
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