しなやかで濃厚な香り

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「生きていられるだけで幸せなんだよ、僕は」 儚げな表情で、海はその言葉を繰り返す。 オレは小さい頃から海のことが大好きで、いつも海の部屋に入り浸っていた。 「いつも1人で寂しくないか?」 オレがそう聞くと、海は必ず微笑んでこう答えてくれた。 「空がいるから寂しくないよ」 俺は海を深く愛していた。 海さえいれば何もいらなかった。 そしてこの家を呪った。 .
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