序章 密使

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永録10年(1567)5月3日。 和歌浦湾からの潮風が紀伊ノ川を遡り紀伊国主であり、雑賀・根来衆を統括する、鈴木重意(佐大夫)の居城内に入ってくる皐月の季節。 城内では、兵士たちにより、鉄砲の訓練が行われていた。 三人は、大手門前の門番兵に止められた。 「ここより、先は城主様の許可が下りない限り、お通しすることが出来ません」 門番兵の言ってる事は正しかった。 三人の中でも最年長(和尚)が、門番兵に家門の入った、薬箱を見せた。 「!?」 「申し訳ありませんでした。どうぞ、お通り下さいませ」 急に門番兵は、家門を見た途端に顔色を変え、大手門を開けて中へ通してくれた。 半刻後にようやく、鈴木家の当主(鈴木佐大夫)に会うことができた。 「某は、恵林寺の和尚で快川紹喜にございます」 「!?」 佐大夫は、一瞬だけ、驚き。 話しを始めた。 「して、武田家の者が何用かございますかな?」 和尚に問う。 「この少年二人を預かって頂きたいのですが、お願いできないでしょうか?」 「相い分かった」 「忝けのうございます」 和尚が低頭して、すぐさま、紀伊をたった。 「重秀は、おるか!?」 「はっ、何用でしょうか?」 この時、鈴木重秀(21歳)であった。 別名を雑賀孫一という。 「この子たちに、色々と教えてやってくれ」 「親父、俺に餓鬼の子守をせよと?」 「良いではないか、弟が増えたと思えば」 「分かったよ」 「てめぇら、ちょいとついて来な」 孫一は二人を連れ、根来村に着いた。 「兄貴、この二人は何者で!?」 「織田の間者ですか?」 「親父に世話を任された、簡単に言えば客人よ」 「ほう」 回りを見渡せば、五百人程の若者が集まっていた。
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