彼女

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「わたし。前から一樹に目つけてたんだ」 柔らかな感触を腕に押し付けながら、短いスカートの女がはしゃぐ。 屋上へ続く階段を昇りながら、俺は内心うんざりと溜息をついた。 (こいつ、なんて名前だったけ?) 下の名前は確か、カナコだ。名字は思い出せない。興味もない。 どうせ聞いても無駄だ。 ヤってしまえば、おしまいだから。 「そーなんだ。俺そんなにカッコイイ?」 調子を合わせて笑いながら、階段を昇りきる。 リノリウムの踊り場を曲がり、続く階段に足をかけた瞬間、俺は凍り付いて動けなくなった。 階段に、髪の長い女が俯いて座っていた。
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