00:始まりはいつも笑いから

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「明日から家族が増えるらしい」 昼休み、2年D組でのことだった。 学内でそれなりの人気を誇り、女関係に軽いことで有名な俺の友人、李緒が爆弾を投下したのは。 「…それで、何組のどなたかしら?」 俺が銜えていたイチゴオレのパックを机に置くか置かないかのタイミング、俺の大事な、大っ事な幼馴染みである菜奈恵は、どこからか出したハリセンを構えて李緒を見下ろした。 それも絶対零度の怒りの視線で、だ。 ここで慌て出したのは李緒。 「ちょっ?! 菜奈ちゃん、待って! 家族って妹だから! 妹!!」 顔面蒼白にして菜奈恵に言い訳する姿は中々に滑稽だった。 普段から飄々としていて余裕たっぷりに笑っている男なだけに余計。 少し胸がすっとしたというか。 ここでハリセンを一旦は引っ込めた菜奈恵だったが。 スパーンと小気味いい音を立ててドアを開け放ち、悪戯大好きな旺太と珠璃が登場して話は変わった。 「李緒、認知したのか?」 「あなた個人もお金あるんだからどっちにしても面倒見なさいよ?」 二人の表情を例えるならばニヤニヤ、というところだろう。 毎度毎回、菜奈恵を煽り李緒を弄るのが二人の日常っである。 それにしても、旺太は生徒会室で食べなかったのか。 いつも身うちとも呼べる生徒会メンバーとお弁当を囲っていた気がしたけど。 「今日は灰兎から面白い話を聞いたからね」 ……なるほど、面白いと聞いてこっちに加わりに来たと。 怖いねぇ、副会長様は。 「だぁから、妹が増えるんだっつってんだろーがっ! いい加減俺の話を聞け、お前ら!」 キーンと耳鳴りで余韻を知らせる李緒の叫び。 軽音楽部の看板バンドのボーカルであり、舞台映えする声量の持ち主だということを自覚して欲しい。 いや、自覚してるからこそなのか。 関係のないクラスメートまでこっちに注目し始めたぞ。 「……で、母親ご懐妊な訳?」 旺太はさっきまでのやり取りを完全になかったかのように、購買で買ったらしい菓子パンを頬張りながら尋ねる。 その内容にふ、と首を傾げた。 「……あれ?全部聞いてきたんじゃないの?」
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