プロローグ

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小鳥の囀りが聞こえる。 瞼は不思議と重くはなかった。寝起きとは何とも息苦しく、気だるく、気分の悪いものなのだろう。 そういったいつもの疑問もない。 携帯電話で設定したアラームの時間より、大分早く目が覚めたようだ。 体は自然と起き上がり、太陽の光を欲している。 カーテンを開き、眩さに顔をしかめた時、脳の方も目を覚ました。 普通の人間ならここでコーヒーでも入れて気持ちを安らげるのだろうが、生憎、普通とは少し違う。 煙草を加えて火を付け、一吹かししてからベッド脇に置いてある新聞を手に取る。 政治、環境、強盗、殺人。 報道は単調だ。 毎朝新聞に目を通しても、その内容は極めて単調、かつ下らない。 そういえば今、目を通している新聞には見覚えがある。 「ちっ、昨日のか」 無意識に新聞を投げ捨てた先には、どっさりと溜まった新聞の山。 そろそろ捨てようとは思いつつ、後回しにしているとこういうことになる。 家で自炊しているわけでもなく、生活中に出てくるゴミは新聞と、煙草の吸殻くらい。 何ヵ月も捨てずにいたため、この地域のゴミ捨て日さえ忘れてしまった。 玄関まで行けば今日の新聞がポストの中にあるだろうが、なんだか読む気力がなくなった。 灰皿の上には、これまた山のように溜まった吸殻。 その山の頂上に、無理やり今吸っていた煙草を押し付けて火を消した。 足が向かう先は洗面所。 もっとも、1DKのこのボロ部屋に洗面所と呼べるものはなく、小さな台所があるだけ。 適当に顔を洗い、歯を磨く。 台所の向かいに掛けられた鏡を覗き込み、ある程度頭髪を整えた。 髪は大分伸びてきているが、これはこれでいい。 茶や金といった派手な色に染めていた若い頃とは違って、今は黒く、落ち着いている。
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