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(あぁ、終わるのか)
意外と呆気ない意識だ。
遠くから聞こえる騒々しい中でそう思った。
不意に、目の前に映るのは今までの自分の人生とそれを作ってきた人々の顔。
(走馬灯・・・なんてぇ恰好いいもんじゃねぇなこりゃ)
そう考えたら思わずふ、と口元が綻んでしまった。
(・・・そうか、これが)
新撰組の最期か
(ま、いい人生だったかと聞かれりゃ答は否、だな)
しかし不満はない。
俺は精一杯全うしたのだ。
そう思った。
(・・・・・・ただ・・・)
「土方さん?!・・・土方さん!!!!」
少しだけ、寂しいと。
そう思ったのだ。
【0.その記憶は再び#Prologue】
「っくしょんっっ!!!」
あ゙ーやだやだ、と思いながら彼はすん、と鼻を軽くすすった。
(誰か俺の噂か?まぁそうかもしれないが)
春はまだ先な冬の終わり頃である。
黒いズボンに短めのブーツを履いた彼はその綺麗な姿勢を保ったまま、ズンズンとえらく荒れた道を進んでいた。
割とお洒落な彼には見合わず周りは林で何だか少し暗い風景である。
(くそ、何で今日に限って商店街やスーパーは皆揃って休みなんだムカつく!!!!)
口にはしないが心の中でめいいっぱい悪態づいた。
下でガッサガッサと歩く度に揺れる4つのビニール袋は苦労して隣町まで買い出しに行った本日の収穫物である。
歩いて2時間。
人の多い電車やバスを好まない彼が要する隣町までの所要時間だ。
(うぁーマジで疲れる!畜生帰ったらぜってー寝てやる、即行にだ!!!!)
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