舞踏会~ラストダンス~

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《まぁ、なんとなく察した者もいるようだが…》 クロイツは、少々言い辛そうに、というか、恥ずかしげに告げた 《私はここにいるエリス・ルーウェルト中尉とは夫婦だ。軍に復職する少し前から、な》 横目でチラッとエリスを見やると、彼女も恥ずかしげに、しかし嬉しさと誇らしさを隠すことなく、表情を赤らめていた 「ヒュ~」、と、無線から口笛が聞こえてきた。誰かは分からない(恐らくはハイゼンベルクだ) 《そ……そんな…》 クリスらしき声が、聞こえてくる それに続けて 《た……隊長に………奥様が………う…嘘…》 スズネの声だった 《隊長、ルフェーブルです。よろしければ、ご結婚なさった経緯をお聞きしたく》 ジェーン、改めルフェーブルが、そう質問すると、周囲からも似たような質問が飛び交った 多分、百人の人間に、今この瞬間の光景を見せて、「彼らはこれから戦争に行く将兵です」と言っても、百人は信じないだろう まるで、修学旅行に行く学生のような空気だった 《私と彼女の馴れ初めから今までを語るには、残念ながら時間が足らな過ぎる。聞きたい者は、生還せよ。いいな?》 クロイツはそう言って場を凌いだ それでほとんど連中は引き下がったが、予想外な人物が食い下がった 《隊長、ヴェデルニコフです。せめて、どのような出会いかくらいはお教え下さい。気になって、戦闘に集中出来ません》 これは、クロイツに心酔するヴェデルニコフならでは、なのかもしれない クロイツは、少しばかり過去を振り返り、懐かしむように言った 《……血溜まりの中、こいつと殺し合ったのが始まりだったな…》 どう考えたって、そこからどうして結婚に至ったのか、理解不明だった 聞いていた全員が、この話を詳しく聞くために、生き残る覚悟をより強くし、後の戦闘で普段以上の実力を発揮したのは、余談である
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