1253人が本棚に入れています
本棚に追加
/156ページ
《まぁ、なんとなく察した者もいるようだが…》
クロイツは、少々言い辛そうに、というか、恥ずかしげに告げた
《私はここにいるエリス・ルーウェルト中尉とは夫婦だ。軍に復職する少し前から、な》
横目でチラッとエリスを見やると、彼女も恥ずかしげに、しかし嬉しさと誇らしさを隠すことなく、表情を赤らめていた
「ヒュ~」、と、無線から口笛が聞こえてきた。誰かは分からない(恐らくはハイゼンベルクだ)
《そ……そんな…》
クリスらしき声が、聞こえてくる
それに続けて
《た……隊長に………奥様が………う…嘘…》
スズネの声だった
《隊長、ルフェーブルです。よろしければ、ご結婚なさった経緯をお聞きしたく》
ジェーン、改めルフェーブルが、そう質問すると、周囲からも似たような質問が飛び交った
多分、百人の人間に、今この瞬間の光景を見せて、「彼らはこれから戦争に行く将兵です」と言っても、百人は信じないだろう
まるで、修学旅行に行く学生のような空気だった
《私と彼女の馴れ初めから今までを語るには、残念ながら時間が足らな過ぎる。聞きたい者は、生還せよ。いいな?》
クロイツはそう言って場を凌いだ
それでほとんど連中は引き下がったが、予想外な人物が食い下がった
《隊長、ヴェデルニコフです。せめて、どのような出会いかくらいはお教え下さい。気になって、戦闘に集中出来ません》
これは、クロイツに心酔するヴェデルニコフならでは、なのかもしれない
クロイツは、少しばかり過去を振り返り、懐かしむように言った
《……血溜まりの中、こいつと殺し合ったのが始まりだったな…》
どう考えたって、そこからどうして結婚に至ったのか、理解不明だった
聞いていた全員が、この話を詳しく聞くために、生き残る覚悟をより強くし、後の戦闘で普段以上の実力を発揮したのは、余談である
最初のコメントを投稿しよう!