動き出す時

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それから眠れない夜を何日過ごしただろう。 今日は何日なんだろう。 っつか…何で俺は本気になるとこんなに空回りするんだろう。 …………本気? ああ…俺は…いつの間にかエリの事…。 いや、いつの間にかじゃない。 本当はずっと、エリを想ってた。 でも本気になりたくなくて気づかないフリをしてたんだ。 遊里と同じ結果になりたくなくて。 「男のくせに…かっこ悪っ…」 久しぶりに出した声はかすれてて、俺の声じゃないみたいだった。 何で失ってから気づくかな。 どうして手遅れになってから…。 何でもっと大事にしてやれなかったのかな。 何でもっと…早く気づけなかったんだ。 もう全てが、手遅れだ。 鳴らないケータイを開くと、遊びの女からのメールが溜まっていた。 「うぜ…」 一件一件消していくうちに、一件のメールが出てきた。 「遊里の…」 篤が送ってくれたメール。 今更遊里の家に行って何になるんだろう。 …でもそこに答えがあると篤は言い切った。 「……」 ギシッ。 根を生やしかけていたベッドから降り、俺は部屋着を脱ぐ。 ………答えを、見つけなきゃいけないんじゃないか。 これからの自分の為にも。 服を着て、トーストをかじりながら。 俺は部屋を出た。 答えを見つけに行く為に―――。
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