―わかると怖い話―

妻２

妻が私を見つめている。
私の胸に、妻と暮らした数十年の年月が去来する。
妻の命が消えようとするこの時を、私は心に刻みつけようと思った。
妻がたどたどしい言葉で、自分がいかに至らない妻であったかを述べ始めた。
気が強かった妻が、このようなしおらしい言葉を口にするものなのだろうか。
私の心の中に、言葉で言い表しようのない感情があふれてくる。
妻は涙を流しているようだった。
この期に及んで、妻の悔悟の言葉なんて…聞きたくなかった。
「もう…いいんだよ」
私はそういうと、手に力を込めたのだった。