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金城さんの気配が消えたのを確認してから、何食わぬ顔で障子をあけた。
「はいなにか」
「こんにちは山崎さん。話し声が聴こえましたがお取り込み中でしたか? 」
立っていたのは私を呼んだ男の声ではなく、何故か女物の袴を着て巾着を提げたナズナさんだった。
「いえ、独り言です。そのような格好でどうしたのですか? 」
ナズナさんの後ろに立っている松原さんに軽く会釈しつつ、訊いてみる。
「まっちゃんと遊びに行くんです」
ナズナさんは答えになってない答えを返してくる。
「そうですか。近頃は益々物騒ですのでくれぐれもお気を付けて」
結局なんの用だろうと考えていると、ナズナさんはいつもの突拍子のない質問をしてきた。
「山崎さんは何が好きですか? 」
「…食べ物のことですか?」
ナズナさんが予測不能で言葉が少ないのはいつものことなので、一々驚かず平静に問い返す。
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