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◇
多分、あれは
小学五年くらい……。
四年生の時から始めたミニバス。
五年になると試合に出る機会も増えて、出ることが自信になり練習を続けるモチベーションになっていた。
その日も全体練習の後に居残って練習をしていた自分。
「ほら! 抜いてみなさいよ」
高く透き通る声で挑発しながら、ニヤニヤとした笑みを浮かべた相手は、女子だけど自分より背が高い。
加えて、自分は誰よりもチビだ。
誰もいなくなった体育館にたった二人。
ドリブルの音と、自分ともう一人のバッシュから発するスキール音だけの世界。
背が高いとは言っても、相手は女子。負けたくない!
自分は無言で、自分の右側、相手の左側へステップを踏み出す。
キュッ!
相手は腰を低くした姿勢で素早く反応し、長い手足を駆使して回り込むみたいに自分を進ませないようにする。
相手の目の前で左回りにターンしながら、ドリブルを左手にチェンジ。
自分が背中を向けたせいで、相手にはどっちの手にボールがあるか見えてないはず!
左ターンに急制動をかけて右ターンに切り替える。
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