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手慣れた手付きで掛けられていた錠を外すと、ゆっくりと門が開かれた。
「ではどうぞ。ギルドはこのまま真っ直ぐ進めば右手に大きな建物があるので直ぐお分かりになると思います」
「丁寧にありがとうございます」
門番の見送りを受けながら、俺は王都【シアランザ】へ足を踏み入れた。
さ、どうなるだろうな。
*
中は西洋風な大通りが広がり、立ち並ぶ数多くの屋台からは商人の明るい客寄せの声が飛ぶ。
歩く人も笑顔が多く、温かな光景が広がっていた。
門番が言っていたように、王様は良い統治をしているんだろうが……。
「貴様!!私にぶつかって詫びも無いのか!!」
「す、すみません!!」
貴族はダメだな。
今、デブでハゲな貴族にぶつかってしまった平民の男が土下座をして必死に謝っている光景に直面した。
これだけ見れば貴族が被害者に見えるが、実際は明らかに余所見をしていた貴族が男の肩に衝突したのが始まりだ。
「この!!たかが平民ごときがこの私とぶつかるなど!!奴隷にされたいか!!」
顔を真っ赤にしてまで怒り狂う貴族。奴は土下座をする男の頭を何度も踏む。
男は痛さからか、悔しさからか、静かに涙を流した。
……………ったく。
この時俺は、″殺し屋″になろうと決心した。
″一応″……元人間だった俺にはまだ良心はあるからな。
それに、ああやって濡れ衣を着せられて罵倒を受ける辛さは解るつもりだ。
前世……地球にいた頃の記憶が頭を過る。昴の周りにいたあの女共の言葉。
気分が悪い。
まずは誰か貴族を殺して噂を立てようかなと考えながらも俺は助けようとしない。
どうせ……。
「おい!!その足を退けろ!!」
コイツが来るだろ。
瞳が金色になった姿を見、思わず殺意が込み上げた。無意識に握られた拳から血が滲み出る。
昴の後ろには銀の腰まであるストレートの髪、金色の輝く瞳を持った華奢な美少女がいる。……銀髪金眼は王族だ。
俺は怒りを抑えつつ、成り行きを静かに見守る。
「何でそんなことをするんだ?同じ人間だろ?」
野次馬達を掻き分け登場した昴に野次馬達はざわつき、貴族と平民は驚いた表情を見せたが、貴族は直ぐに怒りを表した。
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