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「ありがとうござぁーい」
欲望と野心にまみれた夜の繁華街。
人は皆、煌びやかに輝くネオンに汚れた内面まで照らし出される。
そんな、眠らない街を楽しむ人々に、俺はいつも見下ろされていた。
ボロボロになったゴザに座り、傍らに置いたクッキー缶に施しを待つだけの日々。
今も、調子の良いサラリーマンが、連れた女に見栄を張って百円玉を投げ込んでくれたので、その場で土下座して礼を言ったところだ。
――一体、どうしてこんなことになってしまったのだろう。
昔の俺は夢に溢れ、それを叶える能力だってあったはずなのだ。
しかし今は、会社の出世争いに負け、つまらない人間関係のしがらみに蹴落とされ、こんな最底辺まで落ちてしまった。
もう俺は、二度と這い上がることは出来ないだろう。
――ちゃりーん。
十円玉が投げ込まれる。
「ありがとうござぁーい」
俺はすぐさま土下座をする。
これで合計二百円ちょっと。
とりあえず、今日の分の食い扶持は確保できたはずだった。
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