エピローグ

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  (茜にあの文は届くのだろうか) 稔麿は敵を薙ぎ倒しながら前へ前へと進む。 ──君に、言い忘れたことがあった。 書き始めは確かそうだった。 本当はあんな一枚の手紙には収まりきらないくらいの感情がまだ胸にはある。 「邪魔」 「うわぁぁぁっ!」 突いて突いて突いても茜のことが頭から離れない。 相当末期かもしれない、と稔麿は自嘲気味に笑った。 ──ありがとう、僕を受け入れてくれて。 君が僕を受け入れてくれなければ、僕は愛することを知らずに一生を終えていた。 ──ありがとう、僕を理解してくれて。 君が僕を理解してくれたからこそ、僕は喜びを、怒りを、哀しみを、楽しさを、あの時代で感じることができた。 「……っ!?」 稔麿は屍に足を引っ掛けてよろめく。 油断していた。 藩兵もその隙を見逃さなかった。 稔麿は背後から斬りつけられ、そのまま前のめりに倒れる。 ──ありがとう、僕を愛してくれて。 君に会えたことに感謝を。 良かった、本当に良かった。 「捕らえたぞー!」 「早く縄を!!」 周りが煩い。 どうやら致命傷ではないらしいが、生き恥を晒すなんてごめんだ。 ──君のいる現在(いま)がどうか幸せでありますように──。 静かに願う。 するり、と懐刀を抜くとそのまま自身の喉元に突き立てた。 鮮血が辺りに散る。  
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