プロローグ

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君は、美しい人だった。 夜の闇に映えるその姿は、誰もの視線を奪い、支配した。 だけど君は、なんでもないように笑う。 私は、ただの女なのよ、と。 私から目が離せないのは、あなたが追い掛けるだけのこと。 呼ばれれば振り向くし、手招きされれば近付いてゆく。 一人の男に恋い焦がれた、誰のものにもならない女なのよ、と。 まるで猫のように。 まるで蝶のように。 君は、美しい人だった。 ――そして、哀しい人だった。 .
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