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あのぅ、と焦りつつ陽代は質問をしてみた。
「こんな凄いお屋敷だと、採用も難しいんじゃなかったんですか?…まあ、私みたいな借金持ちは特にだと思うんですが」
兵堂はフフッと含み笑いをする。そうしてゴホン、と咳払いをして、答える。
「別枠での採用ですよ…まあ、頑張ってください」
到着ですよ、と桂木が口を開く。エンジンを止めて、イヤースゲエと呟き、まじまじと外を見つめた。
陽代の眼前には、まるで美術館なみの大きな建築物がそびえていた。小柄な彼女の首が、痛くなるほどの高さも広さもある。
思わず、うわぁと声を発してしまい、あわてて口をつぐむ。
「皆さんそうなりますよ。余りにも非現実な世界ですので」
兵堂が、こちらですと陽代の荷物を持って、案内する。玄関口まで行くと、1人の老男性が立っていた。微笑みながらこちらを見る。
「ようこそ兵堂様、お嬢様」
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