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(…大丈夫そうって断言されてもなぁ)
一応は冷静を装いながらも、不安な気持ちが増大する。
「兵堂さん、ここ左でしたっけ?右でしたっけ?」
運転席から声が上がり、隣の上司がまっすぐだ、と道を教えていた。
「でも門がありますよ、ここって誰かの土地なんじゃないんすか?」
心配気に呟く部下に、兵堂はいいから従えと指示をする。
「自動的に開くから大丈夫だ」
ゆっくりと前進する車に反応し、鉄の門が音をたてて開く。スゲェ、と口笛を軽く吹き、ハンドルを回す。
「静かに運転しろ」
兵堂に注意され、桂木はスミマセンと頭を下げる。
なだらかな森の中の一本道を走行する車。
(それにしても、どこまで続くの、この道)
窓から見える景色は、まるで大きい自然公園と勘違いしてしまうほど。
「まだお話していませんでしたね、あなたがお手伝いとして働くところは、実は財閥のお屋敷です。…七々木グループはご存知ですか?」
「ご存知もなにも、働いていたコンビニってグループ系列でしたし…」
ー…テレビのCM、雑誌の一面広告、電車内の吊り広告やらで七々木の名はよく知っている。
確か、コンビニ応募も安定したとこの系列だったからの理由だった。
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