新しい生活へ

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「お久しぶりです、木嶋さん。前瀬さん、こちらが屋敷の執事を勤めている方です」 慣れた口の聞き方で、兵堂は軽く会釈をする。一緒に陽代も頭を下げた。 「こちらのお嬢様が、今回の…」 「はい。頑張ってくれると思います」 老執事は、そうですかと呟き、どうぞと玄関扉を開ける。2人が足を入れた瞬間、「いらっしゃいませ」と一斉に声がかかる。 …制服姿の女性達が、横並びで2人を迎える。 本場英国のクラシック調なスタイル。白いレースのあるエプロンと、黒地の裾の長いワンピース。足元は現代的に黒いタイツとパンプス。 その中から、1人のベテランの風情を醸し出す女性が2人の前に進み、深くお辞儀をする。 「ようこそいらっしゃいました。私が、この屋敷のメイドの長をしております、香山と申します」 陽代はあわてて頭を下げ、「前瀬陽代です、今日からよろしくお願いいたします」と挨拶をした。 彼女は銀縁の眼鏡を指でクイッと上げ、じっと陽代を眺める。そうして無表情のまま、「こちらこそ」と答え、きびすをかえして階段の方に歩く。ピタリと止まり、陽代へ顔を向けた。 「屋敷の主人がお待ちです、こちらへ」
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