〔序章〕

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…秋から冬に、季節が変わろうとしていた。 今までの薄着からあたたかな上着を羽織り、足早に夕方の帰宅を急ぐ人々の群れ。 そんな中、1人の小柄な少女が流れとは逆にゆっくりと歩いている。 5、6歩動いては止まり、ため息。それを繰り返す。 小花柄のチュニックスカートの上にグレーのパーカー。黒のレギンス姿。高めのヒールのショートブーツで、身長をごまかしている。背中には明らかにおおきすぎのリュック。 「……どうしよう」 歩道橋の中央で足を止めて、下を走る車の列を眺め、こう呟く。 ぐしゃぐしゃになった1枚の紙をポケットから取りだし、何度目かのため息。 「なんともなんないかあ」 欄干に両手を伸ばして、顔を空へ向ける。 夕闇の都会の街。ビルの明かりがまぶしい。こうしている間にも、帰宅を急ぐ人達の足首が自分の後ろを何度も通る。 (…何で、こんなことになったんだろ) 唇を曲げ、泣きたくなる。
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