◇◇ 第3章 ふたりの時間 ◇◇

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翌日からも、次から次へと覚えることが満載で、とにかく気付けば夕方……なんて事がもう一週間続いていた。 1番の難題は、電話応対だ。不特定多数のお得意先からの依頼事項が多く、処理の仕方がこれまたそれぞれの場合で異なるのだ。 その度に、村上さんには、『がんばれっ』と励まされ…… 宮前さんには、『人に頼らない!』と叱咤される。 『へとへとだよっ……』 自分にしか聞こえない程度の声で呟きながら、休憩室によろよろと歩いていく。 「大丈夫かぁ…」 突然、後ろから声をかけられた。 振り向くと同時に、松本部長から缶コーヒーをすっと手渡された。 加糖タイプ……子供扱いしてる。 でも、いつもあたしが飲んでる銘柄…… 「はっ、はいっ、大丈夫です」 「お前、わかりやすすぎ、無理すんなよ」 ふっと笑顔が飛び込んできた。 いつもの愛想のない時とのギャップが……タイミングよすぎて……優しすぎて……まぶしい…… 心臓が、トクンッて鳴った。 この人、こんな表情するんだ…… 思わず、缶コーヒーを握ったまま、しばし見とれてしまった。
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