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「うし! 終わり!!」
夜の町に、元気な少年の声が響いた。
歳は10代後半から20代だろう。
プラチナブロンドの髪はうなじが隠れる程度に短く前髪はギリギリ目にかからないくらい。ちょうど左耳の前に当たる辺りに人差し指と親指でつまめそうな量で茶色いメッシュを入れている。
瞳の色は海を連想させるコバルトブルー。
「こら、あんまり大声出すんじゃないよ。何時だと思ってんだい?」
こちらの声の主は長い膝までの黒髪美女だ。まるで黒曜石のようなその髪には傷んだところは見当たらない。
髪と同じ黒曜石のような瞳は、少し厳しい印象を与えている。
歳は少年と同じくらいか、少し上くらいだろう。
「へ~い」
少年はそう言って、美女と共に歩き出す。
ランディ・インパルスとシェラハ・インパルス。外国籍を持ちながら日本語の流暢な親子だ。そう、これで親子だ。そして、死神だ。
2人は今、線路に飛び込み、無理心中した母親と少女の霊をあの世に送ったところだった。
「全く、嫌な世の中になったもんだね。自殺者が絶えないとか、アタシらの仕事減らないじゃないか」
母親シェラハはため息をつく。
「だよなぁ~……。ところで、お袋再婚とかしないの?」
何を思ったか、ランディは突然そんな事を訊く。
「はぁ? どうしたんだい突然。アタシの夫は後にも先にもアッシュ一人さ。再婚して欲しいのかい?」
「そういうわけじゃないけど……。お袋、美人なのにもったない気がして…………」
「アンタにそんな事言われたくないよ! 自分だって同じくせして!!」
「わぁ~! 暴力はんた~い!!」
近くを歩いていたアルバイト帰りの女性はこう証言した。
まるで風のような速さでどこかへ走って行った、と…………。
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