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「そこまで言っているのに、最後は分からないのですか」
ルーアハは微笑みながら光太郎に言うのだった。
「おっ、笑ったな」
光太郎の指摘を受けて、ルーアハは自分の頬に手を当てる。
頬が緩んでいるのが分かる。
「笑え笑え。人ってのは笑ってれば楽しく感じるもんだからな」
光太郎は止めていた撫でる手を再び動かした。
2、3度ほどなで回した後に手を放した。
「あ……」
ルーアハは思わず名残惜しげな声を漏らした。
その事に自分でも驚いているようで、名残惜しいと思った瞬間に顔が熱くなる。
「…………」
光太郎はもしやと思い、放した手をもう一度頭に乗せ、再び動かした。
「~~~~♪」
頭を撫でてやるとルーアハは満面の笑みを浮かべていた。
「光太郎……」
そんな空気の中だった。
身体が凍てついてしまいそうな程に絶対零度に近い声音が耳に届いた。
その手に各自の『コンダクター』を携えた沙姫、アリア、円香だ。
「ど、どうした?」
さしもの光太郎も3人のただならぬ雰囲気に声がどもってしまう。
だが、その元凶を作り出しているその手は未だにルーアハの頭の上にあるのに彼は気付かない。
3人のオーラはより一層に強まる。
ゴゴゴッ!! と空耳なはずの効果音が病室に響き渡る。
「「「自分の胸に聞いて!!」」」
遅れて3人の声がハモり、光太郎の問いに答えながらサッカーボール大の桜色、黄色、紫色の球体が飛んできた。
手加減はされていたようで、光太郎にダメージはほとんどなかった。
しかし、重傷の身には酷く堪えるものがあるのも事実だ。
只でさえ重傷に重傷が重なり、退院が伸びてしまったのを追記しておく。
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