シリアスを終えて大団円を迎える

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リビングに降りると、上村家が総出で席に着いていた。 「光太郎とこうして一緒に朝食を取るのも久しぶりな気がするな」 そう言ったのは一家の大黒柱である徹也だ。 沙姫と光太郎が不仲である事には気付いていたらしいのだが、詳細までは聞こうとしなかったので当人同士で解決してくれるものだと思っていたようだ。 確かに当人達が解決をしたが、それには6年という長い年月を必要としたのだった。 「でもこれからもこうして一緒に居られるんだから良いじゃない」 そう言ったのは沙姫の姉の智香だ。 「光太郎も家族の一員だからな、心配はしていたが、ここまで時間が掛かるとは思わなかったぞ」 これは沙姫の兄である遼太の弁である。 「うっ、ごめんなさい」 沙姫は目に見えてしょんぼりとした態度で謝罪する。 光太郎と仲違いしたそもそもの原因が自分にあるのだから、そう考えてしまうのも無理はない。 そんな彼女にフォローを入れるのは容易いが、少なくとも光太郎が声を掛けるべきではない。 「大丈夫よ沙姫。こうして仲直りできたのだから無問題よ」 いつもの笑顔で、母親の桐子は優しく告げた。 ーーーああ、この日常に帰って来れたんだな。 光太郎は目の前の光景を目に焼き付けながらそう思うのだった。
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