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「八尾先輩…私と付き合ってください!」
時は放課後、場所は校舎裏。
お決まりのシチュエーションで、お決まりの告白。
そんなお決まりの青春イベントを強制的に攻略させられている俺、八尾 縁(やお ゆかり)。
期待と不安が混じりあった瞳で見つめられているので、早々に返答をしてやることに。
「いや、悪いんだけど…俺、狐耳と狐尻尾が生えてる子しか女性として見る事が出来ない」
今年で六回目になる台詞を口にする。
「うわーん!先輩の馬鹿ー!」
涙を散らしながら走り去る彼女を見届け、ため息。
告白を断るのも、楽ではないのだ。
「よぉ、またやってんのか八尾っち。相変わらずモテるねー、守備範囲外から」
そんな俺に声をかける男、根子月 好男(ねこづき よしお)。
数少ない友人であり、理解者でもある。
「うるせぇな、ヨッシー。俺だって、好きでこんなイベント攻略してるわけじゃねーよ」
思わず愚痴を溢す。
「はは、苦労してるのねぇ。ま、勉強もスポーツも出来る、その上顔も良いし背も高い。そんな八尾っちがモテないほうが変だと思うぜ?」
爽やかに言う根子月は、これまた爽やかに笑う。
「ヨッシーに言われてもな、うん。複雑な気分だよ…」
根子月は、ハッキリ言って超のつくイケメンだ。
男の俺から見ても頷けるほど。
背も高く、鍛えられ引き締まった体。
健康的な肌に整った顔立ち。
まぁ、頭のほうは少々悪いがスポーツは万能。
文句無しの逸材なのだが、何故かモテない。
理由は一つ、そう、決定的な理由。
それは…
「まぁまぁ、とりあえず俺の嫁でも見て落ち着けよ」
懐から猫耳美少女フィギュアを取り出して、一笑い。
そう、彼は自他共に認める重度のオタクである。
授業中、机にフィギュア並べて眺めたり、携帯ゲーム機でエッチぃゲームやってニヤニヤするような。
そりゃあもう、重度も重度、一生治らないレベルであろう。
「…はいはい、猫美ちゃんわかったから早く仕舞えよ…。第一、俺は猫耳萌じゃねぇっつーの…はぁ…」
まぁ、可愛いとは思うけど。少しね。
「了解、そう怒るなよ八尾っち。お前が狐LOVEなのはよく、よーく!理解してる」
おどけた口調で彼はうんうん、と二、三度頷く。
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