記憶

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「ここやろ?」 良かったぁ! お礼を言おうと後ろを振り向くと…。 「あれ?山崎君は…?」 そこには人一人といなかった。 どこ行っちゃったんだろう? 山崎君は授業出なくて良いのかな? 私は気づかなかった。 すぐ後ろに悪魔が迫っているなんてーーーーーー…。 「ひぃじぃかぁたぁ?」 「ヒッ!」 恐る恐る振り替えると…。 芹沢先生が物凄い顔で仁王立ちをしていた。 大迫力…! 「土方。どこに行ってた?」 「え…あの…ぇ…ぁ………。」 目が忙しなく左右に動く。 だって、何て言えば良いかわかんないんだもんっ! 怖いよぉ! 「もう一度聞く。どこに行ってた?」 物凄い迫力………。 私は諦めて言った。 「沖田君が、ある人に似すぎてて…。 その人の名前をつい口走ったら驚いた顔をされて……。 居心地悪くなって逃げたら、迷子になっちゃって……。」 ここまで言い終わると、先生の目をチラリと見た。 でも先生の目は、早く続きを話せ!みたいな感じだから、慌てて口を開く。 「そうしたら、山崎君に会って…。 道案内してもらいました。」 「………そうか。早く入れ」 「ほぇ?」 意外な言葉に驚いて変な声がでる。 「早く入れと言ってるんだ。」 背中を軽く押されて中へと入る。 中へと入ると、皆の視線が痛いくらいにひしひしと感じる。 「良かったぁ!土方さん。 突然居なくなるからビックリしたじゃないですかぁ。」 席へと着くと沖田君が声を掛けてきた。 「ごめんね」と小さく呟くと、さっきまでプックリと膨らましていた頬を戻し、にっこりと笑いかけてくれた。 「とにかく戻って来れて良かったです!」 「ありがとうございます。」 微笑みあっていると、 「沖田っ!土方っ! 俺の授業を聞かないとはいい度胸をしてるな?」 先生の怒鳴り声がとんだ。 「「すみませーん。」」 二人同時に言うと先生は、呆れた顔をして、再び授業が再開する。 二人で軽く笑い合うと、きちんと先生の話を聞く体制へと入った。
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