福音

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その日の夕飯はハンバーグ。ただこれだけで喜べたのはしばらく昔の話で。財布さえ気にしなければいつだって、何だって食べられる。少しずつだけど、純粋さってやつは薄れていくんだと、時々思う。 今日の朝は目玉焼きにパン。あまりお金はないし、何より朝に早起きしてまで作りたくもない。それが、大学生になってから一人暮らしを始めた僕の言い分である。 そういえば、今日は姿が見えない。僕にまとわりつく、変な女神さま。名前にふさわしい容姿、風情ではあるけれど、神出鬼没なあたりが少しだけ世間体というか、人間味にかけていて――そもそも神様の類いなのだけど――僕はどうもなじめない。 ガタン。ゴトン。 少し注意をむけてみれば、敏感に察知して彼女はやってくる。ああ、今日もいつも通り彩られた日を送れそうだ――。
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