scene.1

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 陽の唇は、わたしの唇に余韻と余熱を残して、ゆっくりと離れた。 「そんな顔して、……誘ってる?」  たれ目を意地悪く細めて笑う、陽の顔を手で押しのけて、奪い取ったワンピースを乱暴に頭から被る。 「バッカじゃないの? さっさと寝ろ、バーカ」  そう吐き捨てるように言ってベッドから降りると、楽しそうな笑い声が耳に届いた。 「ほんっとに美亜ちゃんは素直じゃないねぇ」  その言葉に、ドアノブを握る手に力が込もる。  ねぇ、素直になったら、なんか変わるの?  ねぇ、可愛くなったら、好きになってくれるの?  素直になって。  可愛くなって。  わたしが、好き、って言ったら、絶対わたしから離れていく癖に。 「……素直な子がいいんだったら、そんな子探せば?」  振り返ってそう言うと、陽はまた楽しそうに笑った。
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