12260人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
陽の唇は、わたしの唇に余韻と余熱を残して、ゆっくりと離れた。
「そんな顔して、……誘ってる?」
たれ目を意地悪く細めて笑う、陽の顔を手で押しのけて、奪い取ったワンピースを乱暴に頭から被る。
「バッカじゃないの? さっさと寝ろ、バーカ」
そう吐き捨てるように言ってベッドから降りると、楽しそうな笑い声が耳に届いた。
「ほんっとに美亜ちゃんは素直じゃないねぇ」
その言葉に、ドアノブを握る手に力が込もる。
ねぇ、素直になったら、なんか変わるの?
ねぇ、可愛くなったら、好きになってくれるの?
素直になって。
可愛くなって。
わたしが、好き、って言ったら、絶対わたしから離れていく癖に。
「……素直な子がいいんだったら、そんな子探せば?」
振り返ってそう言うと、陽はまた楽しそうに笑った。
最初のコメントを投稿しよう!