死にたがりな死神のお話

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 生きていたって面白くないのなら死んでもいいかなー、と少女は思う。人生に疲れたから死にます、なんてありふれた話だ。そんなことを考えているアタシもそんな一人だけど。どこかのビルの屋上で少女は溜め息をついた。 「あーあ死にたい」  死にたくて死にたくて、何回も飛び降りた。 「だけど死ねないなんて、アタシはなんて不幸なのかしら」  自分を殺せば地獄に堕ちるなんて世間では言われている。しかし実際は、死神にされてしまった。人の命を奪うか奪うまいかは自由らしい。そして、運が良ければ生まれ変われるそうだ。一般論で言えばとても美味しい話である。しかし、少女にとって、それは地獄であった。  死神になってもなお死を渇望するなんて可笑しな話である。 「だけど、死にたいんだもん。仕方ないよね」  生きていても楽しくない。人の命を奪う死神なんてもっと楽しくない。 「アタシは死にたいの。つまらない人生なんてイヤだもん」  高らかに笑ってみせ両手を広げる。ビルの下には小さな世界が広がっている。飛び降りたら気持ちいだろうな、とか思っている間に、身体は落ちていっていた。
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