268人が本棚に入れています
本棚に追加
/400ページ
ちょうどその時、茜が漸く車に乗り込んだ。
空を一人で運ぶのは大変だったが、そこは気合いだ。
車はクラクションを鳴らして合図すると、後ろのドアを開けたまま、走り出した。
それを見た真優は車を追う。
走行するスピードはクローンが走るスピードとほぼ同じくらいなので、クローンは必然的に追いつけない。
真優は全速力で100メートルほど走った後、約10メートルほどあった車との距離を縮めて、そのままスタントマンばりに車の中に飛び込んだ。
そのあと車は扉を閉められ、物凄いスピードで遠ざかっていく。
クローンだけがその場に残された。
「くそっ!!」
空のクローンは近くに落ちている石を思いっきり蹴る。
あともうちょっとで手に入る予定だった愛も友情も一瞬の内に遠ざかってしまった。
自分自身のオリジナルの腹にナイフを刺すことは成功したが、死亡率100%かと聞かれればそうではない。
少なくとも茜に引きずられながら逃げる時には息があったし、何よりもナイフを抜き取ることが出来なかった。
あれではナイフが止血の役割をしてしまい、出血多量でのショック死に陥る可能性は低いだろう。
最初のコメントを投稿しよう!