足跡の輝き

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六歳くらいの幼女が、美形な男の手を引いて歩いている。 結納するには丁度よい年頃の男だが、六歳くらいの子を持つ父親には見えない。 現代では有り得ない事だが、この時代は子孫繁栄を重視している為に若い年で嫁いだりする。 だが、それにしても男が子持ちにしては若すぎるのだ。 「ねぇ、相模。」 「何です?」 幼女と男に、近づこうとする者は誰も居ない。 不思議そうに眺めて目の保養にしているだけ。 「姐さまは、何で壬生浪士組にいらっしゃりますの?何してはるの?」 幼女と相模と呼ばれた男が向かうのは、最近京に来て出来たという壬生浪士組。 「それは…女将さんとの条件で秘密になっています。 私もそれは知らされていません。」 見上げる幼女が少しでも安心するように笑顔を見せる相模。 笑顔も束の間、思い出したように真剣な顔になる。 「でも、壬生浪士組の屯所に入ったら、姐さまは母さまに変えて下さい。」 真剣過ぎて怖いくらいの相模を見て、幼女は泣き出すかと思えば花が咲いたように頬をピンクにして喜んだ。 「じゃあ、相模は父さま!?」 踊りそうな幼女を繋いだ手で我慢させながら、相模も嬉しそうに頷きながら頬を緩めた。 踊るのを制された幼女は、じっとして居られないとばかりにピョンピョン飛び跳ねる。 行き交う町の者達はその愛らしい姿に平和と癒しを感じた。 勿論相模もその一人だ。
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