足跡の輝き

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「なぁ相模、ここやの?」 「えぇ。 きちんと壬生浪士組の場所です。」 夜篠と相模、昼過ぎに町を歩いていた二人組が八木邸の門の前に居た。 「何か用か。」 無愛想な門番が槍を片手に二人へ詰め寄る。 その姿に夜篠は怯えるが、相模は爽やかに言葉を並べた。 「琴音さ…琴音は居ますか? 恋仲の相模と申します。」 堂々たる相模の姿に門番が身を引くが、 「通す訳にもいかない。 嘘だったらどうする!」 と虚勢を張って頑固として入らせなかった。 「お父さま……お母さまに会えないの?」 言い付けを守るが不安げに伏し目がちになる夜篠と、話しが違うと慌てる相模。 「河合君、お客さんかね?」 突如現れた優しそうなおじさんが、門番の横に並んだ。 「いのっ、井上さん!」 『着いた……。』 走ってきて急停止したばかりなのに、琴音は息一つ上がっていない。 そそくさと八木邸の門を通って奥へ進んで行く。 「おい」 副長室への廊下を進んでいたら、四人の隊士が琴音の前に立ちはだかった。 『…私今、虫の居所が悪いんですが。』 鬱憤が溜まって爆発寸前の琴音は危ない。 そう隊士に忠告してあげたい気持ちになる。 「はっ! そんな事は知らねえよ。 それより、恋仲が来てるそうじゃねぇか。 いいご身分だなぁ?」 アンチ琴音の隊士達は他にも数人居るが、直接歯向かってきたのは初めてだった。 『………。』 琴音がダルそうに殺気を込めれば戦いて道を開ける。 “いつもより多く、殺気を増しております!” と掛け声がかかりそうだ。
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