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『あ、』
空を見上げると、ふわふわと雪が舞っていた。
『きれー‥』
空に向かって両手を伸ばす。
雪を手に取りたくて、
でも、そんなの出来っこない。
だけど、僕はどうしてもふわふわと舞う雪を手に取りたくて。
『‥取れ、へんよぉ‥っ』
どんなに頑張っても、雪を手に取ることは出来なくて。
『ふぇッ、ぅう‥』
終いには、ぽろぽろと泪が零れ落ちる。
『おーくら‥っ、逢いたいよぉ‥っ』
何も掴めなくて、空を切った手。
その手を、ぎゅっと抱きしめる。
『何で‥っ、何でぇ‥っ?―‥っ、』
ぐっ、とこらえて最後の言葉を飲み込む。
これだけは、言ったらあかんの。
おーくらとの、約束だから。
けどな、僕‥もう限界やの。
おーくら、ごめんな。
約束、破ってまうわ。
おーくら、
((どうして、僕を独りにしたん、?))
〝やすは、独りとちゃうんやから
独り‥だなんて思っちゃダメやで〟
目を閉じると、浮かんでくる。
この約束を交わした時の、
優しく切ない君の笑顔。
END.
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