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いつまで経っても勿体ぶるクロウに痺れを切らせたレインが胸倉を掴んだことで、ようやくまともに話す気になったらしい。
両手を胸の前で組み、何から話そうか一旦悩み、口を開いた。
「んーとな、確かにこの国のクレア姫はもう亡くなっている。レインが見た少女は国王の娘じゃない」
「意味がわからん」
「せかすな」
軽くクロウに睨まれ、口を閉ざす。
実際クロウはこの国にはレインよりも先に訪れている為、情報は彼よりも多く持っている。それに、クロウの方が5歳ほど年上。普段は年齢の差を感じさせないクロウだが、たまにこうやって逆らい難い雰囲気を出すことがある。
普段が温厚なだけに彼が本気で怒ることだけは避けたい。
「国王の親友って人がいてな、その方の娘さんだよ。……もっとも、彼自身はもう亡くなってるんだけど」
「亡くなって……?」
「事故か何かで夫婦揃って亡くなり、身寄りのなかったクレア様を国王が引き取ったって話だ。だけど可哀想だよな、あの子も」
はぁー、と重い息を吐き、レインを見遣る。
先程の鋭い目つきはどこへやら。穏やかな眼差しで。
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