序章

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東北の山奥、そこにこの町はあった。活気の絶えないこの町の名は若知町。 その若知町の外れに、一軒の神社があった。界隈でもここは特に人がよく集まり、談笑の場となっていた。 そんな神社に一人住む少年がいた。 神主を営むこの少年は、普段は胴が海老茶で袖の白い狩衣姿をしており、何故か通常より大きく入れられた肩の切れ込みから『肩神主』などと揶揄されることもしばしば。 天津甘栗の殻に似た色の髪をいつもボサボサに立たせた頼りない外見通り、普段はお茶を飲んだりごろ寝をしたり、神職にしては信じられないほどの修業不足である。 顔はいいのに、せっかくの美男子が、これでは台無しである。 まあ、ああだこうだ言いながらも、当人は気にしていないようだが。
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