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(嘘……お父さんが?
お父さんが手引きしたってことなの?)
あまりの衝撃に、礼子は固まったまま動けないでいた。
ショックが大きすぎると涙も出ないって聞いたことがある。
今の状況は、まさにそれだった。
「もし……違ったんなら……
謝るよ……
でもおじさんだってある意味騙されたんだ
だから頼む!
うちの家族には言わないでほしい」
大人はいつだって自分の保身しか考えてない。
その割には欲望に弱いんだ。
そそくさと男が部屋を出ていったあと、礼子の目からは一筋だけ涙がこぼれた。
妻子のある冴えない中年の男に初めてを奪われる理由はなんだろう?
父が礼子をあの男に差し出した理由が知りたかった。
悔しくて悔しくて、発狂しそうだった。
体のあちこちについた男の痕跡を消したくて、シャワーだけでも浴びようと起き上がる。
すると、足の間からドロッとした男の置き土産が流れて落ちた。
それを呆然と眺めながら、自分の体が汚されたことを実感する。
膝から崩れ落ちながら、震える体を抱き締めて、礼子は声を殺して嗚咽した。
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