隙を作らない

14/17
1702人が本棚に入れています
本棚に追加
/497ページ
自分の未熟さに呆れてしまう。 「あの頃は、貴方の一方的な恋愛ごっこだと思い、私も目を瞑っていました」 市川さんは、どこか諭す様に話し始めた。 「……」 「でも、今は違います。お嬢様も、大人になられました」 「……」 「旦那様は……お嬢様の恋愛は、自由でいい、とは仰られています……が」 語尾だけ、彼の口調が強くなる。 「それでも屋敷の使用人がお嬢様を拐かしたとなれば……周囲にも、社会にも示しがつきません」 「……」 何も言えない。 ……その通りだと思っているから。 だから自分自身、この思いは一生伏せようと……大人になってから考えを改めていた。 執事として、側で静かにお嬢様の幸せを見守られたら、それでいい、と。
/497ページ

最初のコメントを投稿しよう!