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「お、沖田さん、酷いです!」
声を上げたのは、優笑。
「…酷い?」
冷たい目で、沖田が優笑を見ながら言った。
苛々して、ついついキツくなる。
「ウィンディー…いえ、菊次郎が敵かもしれないなんて…。
菊次郎を疑うなんて、酷いです!」
怒ったような、悲しいような優笑の顔。
────ああ、宇佐美さん、こんな顔も出来るんだ。
初めて見た優笑の表情に、沖田は何故か、心がスッと冷めるのが分かった。
ああ、もう。
いろいろ考えるのが面倒だ。
私が苛々している理由も。
宇佐美さんが悲しそうな理由も。
だから、思ったままに言葉を並べる。
「疑うのなんて、当たり前でしょう」
沖田は静かにそう言った。
優笑が目を見開く。
「どうして、ですか」
「突然現われて、盲導犬だとか、神様だとか…。
それに、見たこともない髪の色」
「………髪?」
優笑は、キョトンとして沖田を見る。
その表情を見て、沖田は一気に頭に血が上った。
そう、気付かなかったのだ。
あるいは、忘れていた。
優笑が菊次郎の髪を、見ていないことに。
いや、見れないことに。
「馬鹿にしているんですか…?
貴女が、得体の知れない存在だと言うことも、分かっているはずですよ」
言い終わってから、沖田は自分で自分に驚いた。
──何を、私はムキになっているんだ…。
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