読むと死ぬ本

3/15
27人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
 読むと死ぬ……か。文章にすると単純だが、一体なぜ本を読むだけで死ぬのだろう。  例えばその本の作者が何者かへの恨みつらみを念じながら書き綴り、ページに列ぶ文字のひとつひとつに呪いがこめられているのか。  はたまた、作者、あるいはその本の初代持ち主が非業の死を遂げ、深く思い入れのある本を誰にも渡さぬよう、悪霊となり本に怨念を閉じ込めたのか。  オカルト好きな俺は真っ先にその考えが浮かんだ。だがそれではあまりにありきたりではないか。  幽霊、呪い、そういった単語を一度頭から取り除いて考えてみる。    小さい頃に読んだ仕掛け絵本を思い出した、ページを開くと厚紙でできたお城や人間、動物が絵本の上に立ち上がるあれだ。あれのようにページを開くと読者目がけ毒針が飛び出すとか……。  それとも、ドグラ・マグラで有名な三大奇書のように、その難解で病的な内容で読者の精神に異常をきたすのだろうか。      いろいろな考えが浮かんだが、どれも間違いな気がするし……そのどれも正解な気もする。  図書館で借りた数冊の本を抱えながら、いまだ見た事のない本について思いを馳せながら、家までの帰り道を歩いた。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!