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プロローグ
2019年の初春、私は旅行先のあるホテルでエレベーターを待っていた。
正月の混雑でエレベーターがなかなか来ず、イライラが募る。
周りには10人以上の待ち人がいたが、一度に全員を乗せることは不可能。
そこで私は諦めて非常階段を探し始めた。部屋は5階にあり、息切れは避けられないものの、登れない階層ではない。
人気のないホールの端に扉をみつけた。ぐっと押し開いてみる。
しかし、開けた扉の向こうには再びエレベーターホールが広がっていた。
非常階段だと思っていたその扉は、スタッフ専用エリアへの入り口だったようだ。
きらびやかさはない薄暗い通路が奥まで続いており、人の気配はなかった。
(このエレベーターを使ってもばれないだろう)
いけない事だとはおもいつつ、エレベーターのボタンを押して待つことした。
「こんにちは」
突然、背後から女性の声がした。
(まずい!)
焦った。注意されるに違いない。
「すみません、ホールのエレベーターが混んでいて、ついこちらに…」
言い訳をしながら振り返ると、そこには誰もいなかった。
――――――――――――
忘れかけていた懐かしい風が吹き抜けた。
「オカルト徒然、そろそろ続き書いてみようか。」
とかく、ホテルのエレベーター前というのは怪奇現象が多い。
防犯カメラも演出を加勢して。
2022年1月
リスタートを記念して。
久遠迪知
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