序章 瞳を満たす刻

2/12
136人が本棚に入れています
本棚に追加
/855ページ
 全てを見つめる瞳となりしもの、汝に力を──  かつて、世界を見る天使に全てを捧げようとした人がいた。  人の命は儚い──それでも、天使は人と歩もうとした。  悲しい運命を背負った人を、せめて癒やしてあげられれば、と。  だが人は絶望する。  己の命の理不尽さと、理不尽な運命に対して。  絶望はやがて死に変わり、死はやがて世界を染める。  ともに歩むことは叶わない。  天使は嘆き、人を拒絶した。  そして瞳が満たされた時、天使は涙し、天へ昇った。  人に送った詞(うた)は、今もどこかで語り継がれる。  汝の秘めたる輝きは  内なる瞳に映るまま  太陽と月は重なりて  黄昏の刻に揺らぐまま
/855ページ

最初のコメントを投稿しよう!