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「ふ……そうか。まあ後は……ハロルド次第だが……どうやら、もう終わりみたいだな」
「……え?」
そう言った英雄グラウスが向けた視線の先に、地下から地上に上がってきたボルズやマスターやルーネ、それと気を失ってマスターの肩に乗せられて運ばれる英雄ハロルドの姿があった。
……どうやら、全部終わったようだ。
「ユウイチ!」
安全を確かめて安堵したのかルーネは僕に向かって走り、飛びついてきた。
「凄いじゃないかユウイチ! まさかあの英雄グラウスを倒すなんて!」
ルーネは僕の目の前で満面の笑顔を見せてそう言う。ルーネの頬には薄い切り傷があり、良く見れば鎧の着いていない布地の部分が所々で薄く斬られていた。
「……ベインは?」
「あの嬢ちゃんなら逃げたぜ、ハロルドがボルズにやられた瞬間に『どうやら私の仕事はここまでのようだね』とか言って俺達が掘って来た穴から逃げちまった」
英雄ハロルドを抱えたマスターが、英雄グラウスの隣に英雄ハロルドを置きながらそう告げる。
依頼人が負ければベインにも被害がこうむる。ベインは暗殺者だ、最後まで面倒を見ないのは当然だろう。
「それと隊長さんによろしくだとよ」
やっぱり仕事として割り切ってるようだ。じゃなければもしどこかで会ったら普通に接してくれなんて言うはずも無い。
「ボルズ、これからどうするんだ? 僕には英雄の後処理なんてどうすればいいかわからない」
「その英雄を倒した奴がよく言うよ。やっぱり私の見込み通りの男だった訳だ」
「僕が勝てたのは偶然が重なったから……相手も油断してたし、何より僕の感情を大きく揺さぶったのが敗因だ」
「それをやってのける人間は数しれてる。あんたは十分凄いさ。まっ……安心しな、皇女様達が生きていればどうとでもなるさ、暫くこの二人は独房で反省してもらう事になるがね」
命までは奪わないか……それでいい。そうじゃないと皇女エミリスの優しさのおかげで生きてる意味がない。
生きてこの二人には罪を償ってもらわないといけない、失った多くの命のためにも……簡単に命を奪って終わらせるような事をしては駄目だ。
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