〈Kの悲劇5〉第二章 当然の敗者(四月七日~八日)

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 まず彼女は、ぐるりんが運営の人間か否かを考えることにして、取り敢えずは運営側であると仮定してみた。  その場合、犯人は一人であるとのルールから、いきなり唯一の犯人が死んでしまったことになるが、やはりこれは少し考えにくかった。何故なら、ぐるりんはゲーム開始地点から全く移動をせずにゲームオーバーとなっているので、カップ麺に毒を盛ることは出来ていない。となると、このあとは一切の事件が起こらないことになる。  じわじわと時間的にゲームに参加できなくなった人間をリタイヤさせていくことが目的であったり、何か別の意図で……例えば、主催者の真の目的はゲームを継続させることにあり、実際はこういうコミュニティーサークルを立ち上げたかっただけ……ということも有り得ない話ではないと考えたが、もしそうなら、彼女はそんなゲームに付き合うつもりはなかったし、リタイヤしても悔いはないので、その可能性を考慮するのは一旦止めた。保留という訳だ。  では、ぐるりんが運営の人間でないとした場合はどうなるであろうか?  そうであるならば、懐中時計の言うように、深く考える必要はない。例えどんな意図があったところで、プレイヤーが一人脱落しただけの話であるからだ。  ……と、ここまででは、『どちらにしても深く考えなくて良い』という結論に達してしまう。それが、他のメンバーがゲーム中に至った結論であったが、ゆっこりんは違った。  私達の方が、ルールを取り違えている可能性はないのであろうか?  彼女はそう考えて、やはり手にしているメモに記してあるルールの再読をしてみて、ようやく気付く。  ……!  その瞬間、彼女はこのゲームの抜け道……というより、主催者……つまりは犯人の作戦に至ってしまった。  実際、彼女の気付いた部分が意図されたものであり、それが犯人の作戦であるとするならば、プレイヤーの裏をかくことは容易い。しかし、気付いてしまえば何のことはない、実に下らない結論である。
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