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「すまんな」
桐野は千絵の隣に座り直すと、昔の…薩長同盟の事について話し始めた。
その時もこんな風に宴会をしていた。
「あの時は千絵さぁと坂本さぁ…それに中岡さぁもか。
とにかく皆が一つになって同盟締結のために動いとったな」
「はは。坂本さんや中岡さんはともかく。
私は何もしていませんよ」
「また、そうやって謙遜するんじゃな」
「謙遜なんかじゃありませんよ」
「そうか。まあいい」
そこまで言って、桐野は手元にあったウイスキーを流し込む。
「とにかく、あの晩開かれた酒宴じゃ、薩摩琵琶の演奏もあって本当に楽しい時間じゃった」
そう物語る桐野の表情には、どこか暗いものがあった。
そこで千絵は桐野に気になっていた事を聞くことにした。
恐らく桐野の表情の変化には、それが関係していると思ったからだ。
「桐野さん」
「どうした?」
「先ほど、少し小耳にはさんだのですが…」
千絵は桐野に西郷や大久保利通、それに木戸孝允の命が狙われている事について聞いた。
「ああ、確かにそうじゃ」
「やはりそうでしたか…。犯人の目星はついてるんですか?」
「いや、それが全く分からん。聞いたところによると、そいつは子供のような背丈で、かなりの剣の使い手らしい」
「それは一体どういう手口で?」
関係ないとは知りつつも、千絵は聞いてみた。
桐野は少し戸惑ったが、千絵なら大丈夫だろうと色々と話してくれた。
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