1st.moment

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「あ、愛先生だって……年度末で寿退職だってね」 伊達君があまり考えないようにしてきた事を口にするから、わざと厭味を込めて言葉にした。 それでも何だか あたしの心のモヤモヤは晴れない。 視界の隅で、伊達君が小さく溜め息を吐いてマットの上に仰向けに倒れ込むのが見えて。 砂埃が瞳を掠めると同時に彼の言葉が耳に届く。 「上杉さん、結構言うね」 「それって褒めてる?」 「褒めてない。寧ろ逆」 冷たい風が二人きりの教室を徘徊してる。 あたしは何も答える事なく、寝転ぶ伊達君の手から漫画雑誌を横取りして床の上でページを捲った。
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