涙の約束

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 私の祖母は、とても変わった人だった。  90を超えてもいつも1kmの散歩は欠かさないし、いつも若い男の人といた豪快な人でもあった。  祖母は若くに祖父を亡くしていたためか、どことなく悲しい気持ちもあったのだろう。  そんな祖母が病気になった。  医者に聞くと白血病らしい。  余命は半年、延命治療しかない、と。インフォームド・コンセントと呼ぶらしい教科書でしか習ったことのないことを私は今実感していた。  延命治療というのは所謂薬をいろいろと使うことでそれはさすがに嫌だし祖母も断るだろうということで自宅に連れて帰り、余生を過ごすことで合意した。  祖母はそれからリビングで本を読んでいることが多くなった。  家族のみんなが寝たとしても読み続けていた。父が止めても読み続けていた。呆れるまで読み続けていた。  ある日、私は祖母に聞いた。「そんなに本を読んで、どうするの?」  祖母は、本を持って行くことはできないけど知識なら持っていけるからだよ、と優しく答えた。  その声は今にも消えてしまいそうな感じだった。
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