雨未人さんへ

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.   2011.03.12 ママへ 『パパ?』 『うん?』 『ママはよろこんでくれるかな?』 『あぁ、大丈夫だよ喜んでくれるよ』 『うん、おはなやさんのおじちゃんやさしかったね』 『あぁ、優しかった。お嬢ちゃんは偉いねって言われたね』 『うん、わたしえらい?』 『あぁ、世界一偉いよ』 『えへぇー』 『ママのことそんなに好きか?』 『だぁーいすき』 『そうか……ママは幸せ者だ』 『パパのこともだぁーいすきだよ』 『ありがとう』 花屋でガーベラの花束を買い、 片手で抱きかかえている女の子 まだ、四歳の小さな体には大き過ぎる花束だ 片手でしっかり父の人差し指を握り締めて、花束を何度も抱え直す 『パパが持ってあげるよ』 『いいの、わたしがママにわたすんだもん』 『うん、じゃあおいで』 娘の前にしゃがみ込み、そっと抱きかかえる 『うわぁーいらくちん、パパ、ありがとう』 『重たくなったなぁ』 『おはながおもいのかなぁ』 『そうだね、お花が重いのかも』 三月半ばとはいえ、通り抜ける風はまだ冷たかった 娘の薄いピンク色のダウンジャケットのファスナーを首元まで上げる父 『パパはママのことすき?』 『あぁ、大好きだよ』 『うん! あのね……』 『うん』 『ママもパパのこと、だぁーいすきだって、ママにゆっちゃだめだよ、パパにはないしょってゆびきりしたの』 『そっか、わかった。言わないよ』 『うん、はやくおうちにつかないかなぁ』 『じゃあ走るか! ちゃんと捕まってるんだよ』 『うん!』 娘を抱きかかえたまま走る そのスピードと上下に揺れる様を楽しんでいた .
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