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さらに――。
沙織は親切心で言ってくれた。
「就職のこと、孝一に聞いてみるから。確か事務職を募集してたと思うわ」
そして“孝一の紹介”という形で、私は本当に彼の会社の契約社員になれたのだ。
その時は心から孝一と沙織に感謝した。
ただただ有難かった。
まさか自分が彼を好きになってしまうなんて思ってもいなかったから……。
孝一の会社で働き始めて以来、私は同僚として自然に彼と話すようになった。
開発職の彼と総務部の私とは部署やフロアーはまったく違うけれど、社員食堂で顔を合わせたり、外で一緒にランチをする日もあった。
孝一の印象は沙織が言ってた通り。
知的で真面目で思いやりがあって。
今まで私が過ごした夜の世界では、滅多に出会えないタイプだった。
孝一がキャバクラに通う姿など想像もできないというか……。
好印象を抱きながら彼と接しているうちに、沙織に対する嫉妬心が芽生えていった。
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