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幸せな日常とそれから…
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窓の外は雨が降り続いていて、まさに梅雨の真っ只中の天気。
今日は土曜日で、大樹も朝から琴羽の誕生日会の準備を手伝ってくれた。
午後からは、大樹の家族が遊びにやってくる。
勿論、琴羽の誕生日を祝いに。
そして私はというと……
「紗智、鼻にクリームついてる。」
「へっ……あっ、さっきケーキに顔近づけたときだ!!」
「そんなこと言って、つまみ食いしたんじゃないの?」
「してないよぉ……。」
本当は少しだけ食べた。
それを誤魔化すためにクリームを上乗せしていたときに、恐らく付いてしまったのだろう。
でも、黙っていたら絶対にバレないはず。
そう高を括っていた。
「じゃあ……確認するからな。」
意味深な言葉と共に、私の返事も訊かないままに近づいてくる、大樹の綺麗な顔。
「えっ……ちょ……」
そんな躊躇いも受け入れられないまま、私の唇を味わうように食んでくる。
そして口の中に入ってきた熱い舌は、何かを感じた瞬間に、すぐに退散した。
「大樹……?」
すっかりその気にさせられた私は、彼の思いも寄らない行動に、きょとんとしてしまう。
すると、目の前の顔つきは、途端に意地悪な笑顔へと変わる。
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